現状と今後の見通しにより選択肢は変わる
「住宅ローンの返済が苦しい」と言ってもひとによって状況が違います。
いくつかの段階に分けて考えてみます。
返済が苦しい状況分類(便宜上、傷の程度の表現を利用しています)
【軽傷】現状も今後も収入の大きな悪化要因はないけれど、諸々の支出が増えて家計収支が悪化している
【中傷】既に収入が減少しているまたは、収入減少が確定していて、近い将来の家計収支の悪化が確実
【重傷】既に住宅ローンの返済に遅れが生じている(遅れながらも返済はしている)
【重体】住宅ローン返済を延滞し始めている
【心肺停止】銀行からも一括返済など次のステップの話が出ている
便宜上、軽傷〜心肺停止という表現を利用していますが、住宅ローンの返済を継続できる(=マイホームを所有し続けられる)かどうか?という観点で分類しています。
線引きは僕の独断です。
各段階ごとの選択肢について触れていきますが、今回は【重傷】の時の選択肢についてです。
現状把握(必ず必要)
軽傷、中傷の時と同じで、やはり現状把握は重要です。
気持ち的にはもう「家計の現状なんて直視したくない」と感じているでしょう。
毎月いくら不足が生じているのか?
僕が相談の際に利用しているチェックシートも共有しておきます。
銀行に相談
早急に銀行に相談することをお勧めします。
返済が苦しいと銀行に相談することは恥ずべき事でも何でもありません
ということです。
- リースバック
手放すことは受け入れたけれど、子供の受験と重なるとか自宅に介護が必要な家族がいるので住環境を今は変えられないなどの事情があって、できたら今は売却は避けたいというときに選択肢になるのはリースバックです。大まかな仕組みは下記の通りです。メリットは
- 自宅を不動産取引の評価額に基づいた売買金額を設定し、不動産会社へ売却
- 売却した資金で住宅ローンを返済
- 自宅の所有権は手放すが、賃借人として売却した相手の不動産会社に家賃を支払いそのまま住み続ける
「今は住環境を変えられない」という事情を優先できる住宅ローンを完済できる(売買金額が住宅ローン残高を上回っていれば)ご近所に売却したことを知られずらい取引相手によっては将来の買戻し金額も示してくれる(状況が改善したら買戻しもできる)所有者ではなくなるので固定資産税の負担はなくなる設備の故障などの費用は大家である不動産会社の負担デメリットとしては住宅ローンは完済できても家賃は発生しつづける一般に売却に出すよりも売買金額は安くなることが多い所有者ではないので自分の意志でリフォームなどはできない賃貸借契約の更新など費用が発生する住宅ローンを返せる金額で売買できるか?が重要になります。購入時点でそもそも諸費用まで借りるオーバーローンをしていると評価額以上に借りている可能性が高いのでリースバックで売却しても住宅ローンが残ってしまうのでリースバックを検討する価値がなくなります。
- 売却して賃貸住宅へ住み替え
今は住環境を変えられない事情も特になく、売却して別のところに引越すことも問題はない場合、売却して住宅ローンを清算することも検討可能です。売却金額で住宅ローンの残高が精算できるまたは不足する分は貯金で穴埋めできることが最低条件になります。そして返済に遅れが生じてしまっていた事実がある場合、売却して住み替えで別の家を購入するのはハードルが高くなります。なぜなら次の住宅ローンの審査は返済が遅れていた事実がネックになるからです。なので「重傷」の場合、売却後は基本的には賃貸住宅を探すのが現実的です。もちろん何らかの事情で自己資金で家が買えるなら話は別ですが、そんなことが可能ならそもそも住宅ローン返済に困ることもなかったでしょう。売却の大まかな流れは次の通りです。
- 不動産仲介会社へ自宅の査定依頼
- 不動産仲介会社からの回答を踏まえて、住宅ローンの清算が可能か検討
- 精算可能な場合、売却を依頼する不動産仲介会社と媒介契約締結(同時に販売価格を相談)
- 不動産仲介会社にて販売活動会社
- 購入希望者が見つかり、その方の住宅ローン事前審査の承認を得られれば、売買契約
- 購入希望者の住宅ローン本審査承認後、残代金決済
- 売却代金で住宅ローンを完済 → 引越し
- 個人再生手続き(住宅ローン特別条項)
住宅ローン返済が苦しい原因のひとつにカードローンなど別の債務返済が重いという場合に検討できるかもしれない方法が個人再生手続き(住宅ローン特別条項)です。基本的には弁護士や司法書士にお願いして手続きを進めます。制度の概要としては裁判所へ再生計画を申し立てて、認められれば住宅ローン以外の債務を5分の1〜10分の1に減額し、3年〜5年の分割払いで返済していく制度です。住宅ローンは手を付けずにそのままの条件で返済をしていきます。住宅ローン以外の債務が圧縮されることで家計的にも再生していけるようにする制度です。ただ 住宅ローンには手を付けない=マイホームは守れる ため、自宅の不動産評価額も確認され、不動産評価額から住宅ローン残高を差し引いた残りの金額とその他の債務の最低弁済額を比較し、大きい金額分の債務を返済しなければいけません。文章だと分かりづらいので例を示します。【個人再生のメリットが出ないケース】自宅の評価額(不動産の実勢価格) 2800万円住宅ローン残高 2000万円カードローン等の残高 800万円最低弁済額(住宅ローン以外の債務の5分の1) 800万円 × 1/5 = 160万円160万円を3年で分割して返していけば良いのではなく、自宅の評価額を確認自宅の評価額 2800万円 − 住宅ローン残高 2000万円 = 800万円上記の場合、自宅の評価額をベースに計算した800万円が最低弁済額になり、個人再生をしてもカードローン残高と同額の800万円を返済しなければいけずメリットがありません。【個人再生のメリットが出るケース】
自宅の評価額(不動産の実勢価格) 2000万円
住宅ローン残高 2000万円
カードローン等の残高 800万円
最低弁済額(住宅ローン以外の債務の5分の1) 800万円 × 1/5 = 160万円
160万円を3年で分割して返していけば良いのではなく、自宅の評価額を確認
自宅の評価額 2000万円 − 住宅ローン残高 2000万円 = 0円
上記の場合、160万円を3年分割で返済していくことになります。
自宅の不動産評価額が高い場合や住宅ローン残高が少なくなっている場合、個人再生でメリットが出ないケースも少なくありません。個人再生手続きのデメリット・債務の一部を免除してもらうことには変わりないので、個人信用情報に傷がつきます = 新しいクレジットカード作成等は原則難しい・新しい借入は当面難しい・官報に掲載される(一般の人が頻繁に目にするものではありませんが、公に名前が掲載される)
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