少なくとも住宅ローンを借りるときには、返せなくなると思って借りている人はいないでしょう。
もしかしたら「返済額は今の家賃と変わらない金額だし・・・もし何か状況が変われば最悪は売却すれば良いか」
と自分に言い聞かせて、住宅ローンの契約書に実印を押したかもしれません。
僕もハウスメーカーに勤務していた頃に住宅ローンを借りましたが、銀行との契約の時には不安を感じながらも
「何とかなるだろう・・」と自分に言い聞かせていました。
仕事で住宅ローンには毎日のように触れていたにも関わらずそんな感じでした。
その後、独立してもそのまま返済し続けています。
まぁなんとかやってはいます(笑)
さて、この記事を書いている2020年5月は新型コロナを原因とした経済不安が増大している状況です。
既に破綻した企業のニュースも流れてきています。
個人でも収入がゼロになったという個人事業主の方なども少なくありません。
コロナだけに関わらず環境の変化で住宅ローンの返済が「これから苦しくなりそう」、「既に苦しくなっている」
という場合にどんな選択肢が考えられるのかまとめてみました。
現状と今後の見通しにより選択肢は変わる
「住宅ローンの返済が苦しい」と言ってもひとによって状況が違います。
いくつかの段階に分けて考えてみます。
返済が苦しい状況分類(便宜上、傷の程度の表現を利用しています)
【軽傷】現状も今後も収入の大きな悪化要因はないけれど、諸々の支出が増えて家計収支が悪化している
【中傷】既に収入が減少しているまたは、収入減少が確定していて、近い将来の家計収支の悪化が確実
【重傷】既に住宅ローンの返済に遅れが生じている(遅れながらも返済はしている)
【重体】住宅ローン返済を延滞し始めている
【心肺停止】銀行からも一括返済など次のステップの話が出ている
便宜上、軽傷〜心肺停止という表現を利用していますが、住宅ローンの返済を継続できる(=マイホームを所有し続けられる)かどうか?という観点で分類しています。
線引きは僕の独断です。
各段階ごとの選択肢について触れていきますが、今回は【軽傷】の時の選択肢についてです。
【軽傷】現状も今後も収入の大きな悪化要因はないけれど、諸々の支出が増えて家計収支が悪化している
家計支出を見直す。
住み替えも視野に。
まず冷静に確認してほしいのは、家計収支悪化の要因は何かということです。
住宅ローンを借りた時と今との違いを考えてみましょう。
家計簿をつけていれば比較してみると良いのですが、つけていない場合でもまずは事実を正確に把握しましょう。
「無駄使いはしていないよ!」
と思う人もまずは書き出してみてください。
重要なのは事実をみることです。
そして重要なポイントは「書き出したものを見て、良い悪いの評価はしない」ということです。
ただ事実を見てください。
僕が相談の際に利用しているチェックシートも共有しておきます。
特別なシートではありません。
洗い出す際の項目の目安になればと思います。
家計チェックシート
今後も収入の悪化もなく、安定した収入が見込める前提で書きます。
収入が大きく増えるわけではなければ、支出を減らす術を考えなければいけません。
STEP1の現状の書き出しだけで無駄使いを発見しているかもしれません。
使途不明金も発見しているかもしれません。
無駄使いだと思うものはやめられそうでしょうか?
ガチガチに支出を削減するのも息が詰まりますので、ご自身で今よりも無理なく減らせる金額を考えてみましょう。
使途不明金は明確化を試みてみましょう。
そのうえで収支を改善するにはどれくらいの支出の削減が必要でしょうか?
削減できる可能性のあるものをピックアップしてみましょう。
家計の見直しではよく言われることですが、固定費の削減は大切です。
削減効果が大きくでるかもしれないのは保険と住宅ローンです。
保険の見直しと住宅ローンの繰り上げ返済や借換により毎月の支出を減額させられる可能性があります。
さらに最近では格安スマホなどへの切り替えでの通信費の見直しです。
毎月支払っている生命保険や自動車保険などの損害保険を見直す時のポイントを少し書きます。
どの商品なら保険料が安くなるのか?という視点に陥りがちです。
決して間違っていませんが、そもそも必要な保障かどうかという点も考えてみましょう。
必要保障額を大きく上回る保障金額をかけているケースも少なくありません。
必要保障額は
(必要な生活費年額 × 一番下のお子さんが独立するまでの年数) − 遺族年金など社会保障の金額 ー 死亡退職金の目安金額 − 現状貯蓄額
で凡その目安は出せます。
生命保険の加入を検討していて、保険ショップなどで話を聞いていると色々と他にも必要な保険があるような気もしてくるでしょう。
色々なリスクを考えていたら、この特約やあの保険も必要かなとなるものです。
特に生命保険は「どこの保険会社の商品か?」より前に「どのくらいの保障額が必要か?」「どんなリスクに備えておきたいか?」という概要を決めて、
それにあてはめる商品を探す順番にやらないと不安を煽られて、必ずしもあなたが必要ではない保障まで買うことになります。
そして一度、確認しておきたいのが勤務先の福利厚生制度です。
大きな企業にお勤めの方なら勤務先の福利厚生制度として保険の団体割引や共済制度などがあります。
そういった制度はその会社にお勤めだからこそ使える制度でもありますので、ぜひ有効に活用しましょう。
勤務先にはそういった制度はない場合も勤務先が所属する業界団体や商工会議所などの制度を活用できるケースもあります。
そういったところまで会社の制度を確認できると有利に保障が得られる可能性もあります。
住宅ローンの返済額は借換をして、金利を下げることが実現できれば減額も実現できます。
借換も当然、審査がありますので、軽傷のうちがチャンスです。
審査では前年、前々年の収入をもとに審査することが一般的です。
やはり収入が減ってからの審査では不利になることがあります。
また返済の遅れや延滞をしてしまってからも難しくなります。
なので軽傷のうちが借換を検討するチャンスです。
もちろん低金利が長く続いていますので、返済中の住宅ローンから有利な借換を実現できるかどうかは
個々の条件を確認する必要があります。
ただ、もし現在返済中の住宅ローンがフラット35Sで当初5年や10年の優遇期間が終了しているもしくはそろそろ終了する頃だという方は
金利が下がる可能性がゼロではありません。
さらに団体信用生命保険の保険料が別払いの時代にフラット35を借入をされている方も
今は団信保険料込みでフラット35を借りられます。
年払いの団体信用生命保険料込での支払い額との比較では借換のメリットが出る可能性があります。
借換のメリットは出なそうな場合、毎月の返済額を下げるもうひとつの方法が繰上げ返済です。
繰上げ返済に使える資金が手元にある前提にはなりますが、返済額軽減型の繰上げ返済をする方法です。
繰上げ返済にはふたつの方法があります。
一般的には繰上げ返済をしても毎月の返済額は変えずに返済期間を短くしていく方法(期間短縮型)が取り上げられることが多いです。
もうひとつの返済額軽減型は繰上げ返済後の返済期間は変えずに毎月の返済額を減額する方法です。
残高が減った分、毎月の返済額を減らすけど返済期間は変えないので利息の軽減効果は少なくなります。
返済期間短縮型の方が利息の軽減効果は大きくなりますので繰上げ返済のメリットも大きいと言えます。
正常時なら同じ額の繰上げ返済をする場合、返済期間短縮型を進めることが多いのですが、目先の資金繰りを改善することを優先させるなら
返済額軽減型も決して悪い選択ではありません。
繰上げ返済の違いについては別のコラムで詳しく触れたいと思います。

軽傷のうちは、来月の返済の資金が用意できないような切羽詰まった状態にはなっていないと思うので、
支出の見直しをするにしても踏み込んだ削減ができない恐れがあります。
STEP1で書き出してみて、あまり利用はしてないけど契約しているサービスがあっても解約したらそれはそれで不便だしなぁなんてスパッと
決断できないかもしれません。
軽傷の内に見直しができるをその後の家計管理はぐっと楽になります。
クレカ払いにしている毎月の会費などよくよく見直してみてください。
意外と無駄かもしれないものは存在しています。
そしてそういった見直しも自分だけでやろうとすると甘えが出てしまうという方は是非、ファイナンシャルプランナーを利用してみてください。
最後に軽傷でもぜひ一度考えてみて欲しいことがあります。
それは
「このまま住宅ローンを払い続けて今のマイホームを守りたいですか?」
ということです。
ライフスタイルも変化していきます。
買った時とは状況が変化していて、「本音レベルでは今の家にそこまでこだわりはないかも・・」という心の声が出てくるなら
売却して住宅ローンを清算してしまうことも決して悪い選択ではありません。
もし背伸びして買った感覚があるなら、もう少し安い物件に住み替えることも
検討しても良いかもしれません。
少しでも参考になると幸いです。
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